「愛玩動物看護師監修 犬を迎える前に知っておきたい!終生飼育が本当に意味する責任とは?」
- miraiyumekanau

- 11月4日
- 読了時間: 5分
更新日:11月11日
はじめに
犬と暮らすということは、単に「飼う」ことではありません。それは、<ひとつの命を預かり、その生涯に寄り添い、責任を持って見届ける>ということです。
動物愛護管理法でも「終生飼養(しゅうせいしよう)」の理念が明記され、飼い主は動物の命が尽きるまで適切にお世話をする義務があります。しかし現実には、引っ越しや病気、経済的理由などで飼育を続けられなくなるケースも見られます。
この記事では、犬の「終生飼育」とは何か?そして飼い主としてどんな責任を果たすべきかを解説していきます。

終生飼育とは?
「終生飼育」とは、犬の一生を通じて適切に飼い続けることを意味します。元気な子犬の頃だけでなく、老齢期や病気のときも含めて、最期まで世話をし続ける姿勢のことです。
犬の寿命は一般的に12〜16年ほど。その間には、飼い主自身の生活環境や健康、経済状況が変わることもあります。それでも「家族」として迎えた以上、最後まで責任を持つ覚悟が大切です。
終生飼育には、以下の3つの側面があります。これらをバランスよく続けることが、飼い主としての「終生責任」につながります。

動物病院で直面したリアル
私は動物医療に20年近く携わっていますが、そこで多くの想像を絶する出来事に直面してきました。
例えば
「お子さんが怪我をしないよう、犬歯を抜歯してもらえませんか?」(柴犬)
「吠えて近所迷惑になるので、声帯を切除してください」(トイプードル)
「人を噛むので危険だからもう飼えません。安楽死をしてもらえませんか?」(ボーダーコリー)
動物病院に勤めていた頃、時々このような飼い主さんからの依頼されることがあり、その度に心が痛む想いでした。
もちろん、動物病院としてどのような依頼も受けることはできません。
飼い主と時間をかけて話し合いを重ね判断していきます。依頼をお断りする場合には一緒に里親を探したり、トレーニングの専門家を紹介するなどの対策をとるなどしました。
なぜこのような問題が起こるのか。私はその犬に関わる周囲の「人」に責任があると考えます。専門家は適正飼養の説明を飼い主に正確にすべきですし、犬を迎える飼い主もまた覚悟と責任を持たなければなりません。
「噛むから」「吠えるから」は犬として当然のことなのです。
飼い主に求められる「5つの責任」
①健康を守る責任 | 定期的な健康診断、ワクチン接種、フィラリアやノミ・ダニ予防は、犬の命を守る基本です。 病気の早期発見・早期治療のために、年に1~2回の健康チェックを心がけましょう。 また、加齢による体の変化に合わせて、食事や運動量を調整することも重要です。 「昔と同じ」で済ませず、獣医師に相談しながらケアを続けていきましょう。 |
②快適な生活環境を整える責任 | 犬が安心して暮らせる空間づくりも、終生飼育の一部です。室温管理や寝床の清潔さ、散歩の時間、 他の犬との関わり方など、日常の小さなことが積み重なって「幸福度」を左右します。高齢期には足腰が弱るため、滑りにくい床材や段差対策も必要になります。老犬介護用品やサポートハーネスを活用するのも良いでしょう。 |
③経済的な準備をする責任 | 犬を飼うには、毎月の食費や医療費、トリミング代などがかかります。病気や手術が必要になれば、 10万円以上の費用が発生することもあります。ペット保険を利用する、あるいは「ペット貯金」を 作っておくなど、将来を見据えた備えが安心です。特に高齢期は医療費が増える傾向があるため、 若いうちから計画を立てておくと良いでしょう。 |
④家族や周囲と協力する責任 | 自分にもしものことがあったとき、犬はどうなるでしょうか?病気や高齢で世話が難しくなったときに 備え、「家族で世話を引き継げる体制」を作っておくことが大切です。最近では、飼い主が亡くなった後に犬を預かる「ペット後見制度」も注目されています。信頼できる家族や友人、地域の保護団体と連携し、犬が安心して暮らせる環境を確保しておきましょう。 |
⑤社会の一員としての責任 | 犬との暮らしは、社会の中にあります。吠え声や排泄物の処理、リードの管理など、周囲への配慮も 飼い主の大切な役割です。「うちの子だから大丈夫」ではなく、公共の場では常に他の人や動物への思いやりを持つこと。その姿勢が、犬と人が共に暮らしやすい社会をつくります。 |
動物関連職者の役割
終生飼育を実現するには、飼い主だけでなく、動物病院などの医療チームのサポート、ドッグトレーナー、ブリーダー、ペットショップ店員など、動物に関わるプロフェショナルの存在も欠かせません。
「最近食欲がない」「吠えて近所迷惑になってしまう」「人を噛んでします」「介護の方法がわからない」
そんな相談こそ、遠慮なく話してみましょう。
生活面のケアや予防、しつけに関しても多くの知識を持っています。「暮らしを支える存在」として頼れる味方です。

犬の命と向き合う覚悟が、暮らしを豊かにする
犬を迎えるとき、「かわいいから」「癒されたいから」という気持ちは自然なことです。けれども、命を預かるということは、嬉しい時間だけでなく、介護や別れの瞬間まで受け止めるということでもあります。その覚悟を持つことが、犬との暮らしをより深く、温かいものにしてくれます。そして、最後の瞬間まで「あなたと一緒で幸せだった」と思ってもらえることこそ、飼い主にとっての最高の喜びではないでしょうか。
まとめ
犬の一生に責任を持つということは、「今を大切にしながら、未来も見据える」ことです。健康管理、環境づくり、経済的準備、家族との協力、どれもが終生飼育の大切な要素です。人と犬が共に幸せに暮らすために、今日からできる小さな一歩を始めてみましょう。それが、あなたと愛犬の「豊かな一生」をつくる第一歩になるはずです。
執筆・監修
愛玩動物看護師 仲地亜由美


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